緑内障の精査・加療(レーザー治療含む)

A、はじめに

緑内障患者が40歳以上の日本人17人に1人もいらっしゃることがわかって久しい現在であるがゆえ、眼科医は現状で考えられるもっとも理想的な治療・経過観察を確立するべきだと考えます。緑内障は糖尿病や高血圧と同じ慢性疾患に属します。すなわち一生薬を続けなければならない病気なのです。しかも点眼液は高価で、これからの医療情勢を鑑みても患者負担は増大する一方です。だからこそ当院では、処方した点眼薬が患者の眼圧を下げているのか(本当に効いているのか?)を確認するために、初診時緑内障であることが判明した場合、眼圧の日内変動測定を行います。眼圧は一日のうちでも時間帯によって変化し、とくに日本人に多いとされる正常眼圧緑内障の方には必要な検査だと思います。そして緑内障の患者様には、是非とも緑内障について自分自身が十分理解して頂き、「自分の身体は医者任せにせず自分で守る」ようになってもらいたいがために、とくに初診の緑内障の方には別に時間をとって(当院休憩時間にゆっくり時間をかけて)スライドを用いて納得していただけるまで説明させてもらうようにしております。

B、知っておきたいこと!
  • 緑内障加療における眼圧測定は、可能な限り、非接触型眼圧測定(眼に風を当てて測る方法)だけではなく、暗室においてアプラネーショントノメーター(点眼麻酔を行い青い光を発するチップを直接眼に当て眼圧を測る方法)で行うべきです。
  • 人間ドッグなどで眼圧のみ測定(しかも空気眼圧計)する施設があるようですが、眼圧さえかつていわれていた正常値(10~19mmHg)の範囲内なら心配ないという考えは誤りです。日本人にではむしろ正常眼圧であるに関わらず緑内障を発症する正常眼圧緑内障が一番多いのです。緑内障であるかどうかを見極めるのに一番大事なのは、視神経乳頭を診ることにあります。(眼底写真を撮影するドッグならば信用できます)
正常な視神経乳頭です。

正常な視神経乳頭です。全体的にオレンジ色をしています。

やや進行した緑内障です。

やや進行した緑内障です。右下に陥凹の偏り(Notching)と視神経線維の欠損(NFLD)が見られます。正常眼圧緑内障でした。

かなり進行した緑内障です。

かなり進行した緑内障です。視神経全体が白っぽくなっています。

C、当院での緑内障精査の流れ(初診時)
  • 視力測定
  • 眼圧測定(必ずアプラネーショントノメーターで)を行う。
  • 視神経乳頭の性状確認(眼底検査、眼底写真撮影、OCTによる画像解析)
  • ②にて異常な高眼圧および、③にて緑内障性視神経乳頭を呈した場合には、静的または動的視野検査を行う。
  • 患者の年齢、人生観(大事なことだと思う)を伺い、治療方針を決定する。必要ならば、後日眼圧の日内変動測定を予定する。

いきなり両眼に緑内障点眼治療を開始することはしない。
基本的には片眼のみ点眼開始し、後日眼圧の左右差を見て効果が見込まれた場合のみ両眼開始とする。

D、緑内障治療の基本は毎日規則正しく点眼を行うことにつきます!

緑内障治療の基本は、点眼薬を正しい点し方で、三度の食事以上に大事な習慣にすることに尽きます。
ラタノプラストをはじめとした眼圧下降作用に優れた点眼薬が出現し、最近はいきなり手術をしなければならないケースは少なくなりました。
その分点眼薬を正しく点すことが一番大事になってきます。
大阪厚生年金病院の桑山先生は緑内障手術の第一人者ですが、その先生ですら「現在の緑内障治療の基本は点眼にあり、手術は止む終えないケースに留めるべきである」と言われております。

正しい点眼の作法は…

  • 下まぶたの真ん中をつねるように引っ張り、赤目(瞼結膜)に小さなポケットをつくる
  • そこから5cmくらい離したところから、一滴のみ点眼する。
  • 瞬きはせず、すぐにまぶたを閉じる
  • そのまま30秒以上まぶたを閉じたままで、軽く目頭を押さえる
  • こぼれた液はティッシュで拭くか、顔を洗う。

です。

E、点眼薬にて眼圧下降の得られないもの、視野障害の進行するものに対してはレーザー治療を行うことがあります。

レーザー治療が効果的なのは
閉塞隅角緑内障の初期段階におけるレーザー虹彩切開術(Laser Iridotomy)
水晶体嚢性緑内障に対するレーザー線維柱帯形成術(Laser Trabeculoplastyだと考えます。

F、点眼薬・内服薬・レーザー治療のいずれを行っても進行する緑内障には止む終えず手術を行います。

手術術式は
濾過胞を形成する手術:トラベクレクトミー+MMC、非穿孔性トラベクレクトミー+MMC
濾過胞を形成しない手術:トラベクロトミー、Suture canalization、Viscocanalostomy GSL等があります。

当院ではトラベクロトミー(+Sinusotomy)を行うことがあります。
他の術式が必要な場合は、信頼できる施設のGlaucoma Surgeonに紹介させて頂いております。

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