眼瞼下垂の手術

当院は愛知医大准教授柿崎裕彦先生の研究による、解剖学的エビデンスに基づいた眼瞼下垂手術を行っています。

– 手術実績 –

挙筋短縮術(Levator Resection)(他院にての出張手術を除く)
2004年:48上眼瞼
2005年:93上眼瞼
2006年:117上眼瞼
2007年:157上眼瞼
2008年:153上眼瞼
2009年:152上眼瞼
2010年:173上眼瞼

前頭筋吊り上げ術(0.3mm Goatexシート使用)
2004~2011年現在:73上眼瞼

– 著作 –

「眼科マイクロサージェリー」(エルセビア)

眼科医に広く読まれている教科書。挙筋短縮術と眉下皮膚切除術の手技について記した。(野間一列・三戸秀哲)

PAPARS増大号「眼瞼の退行性疾患に対する眼形成外科手術」
(全日本病院出版会)

多くの形成外科医の間で読まれている教科書。
「挙筋腱膜の利用を主体とした眼瞼下垂手術」の項にて両側同時眼瞼下垂手術の作法について記した。(野間一列)

手術費用は片眼につき(H24.3.31まで )
1割負担の人で8000円
2割負担の人は15000円
3割負担で25000円程度であると考えてください

治療を行う前に確認すべき事項を以下に挙げます。

  • いつから瞼が下がってきたのか?(先天性or 後天性の鑑別)
  • 下がってきた原因は何か?(神経性・筋原性の疾患に伴うものの可能性)
  • 本当に眼瞼下垂なのか?(眼瞼痙攣や顔面神経麻痺に伴う眉毛下垂の可能性)
  • 手術の適応(手術して患者さんが満足する見込み)があるかどうか
  • 術式の選択は?

①に関して、患者さんの話を信じていないわけではないのですが、一億円の小切手をもらっても「覚えがない」という政治家がいる例えに無理があるにしても、記憶というのは至極あいまいなものです。手術希望の患者様にはできるだけ昔の写真を持参してもらい、眼瞼下垂が先天性(生まれつき)かそうでないかを確認させていただいております。

②重症筋無力症、動眼神経麻痺、Horner症候群が原因の場合は、原疾患の精査・治療を優先させる場合があります。(筋無力症の急性期以外は手術の適応があります)

③顔面神経麻痺の既往があれば、前頭筋の弛緩に伴い眉毛の位置が下がります(眉毛下垂)基本的にこれは眼瞼下垂とは区別いたします。こちらに対する手術(顔面神経麻痺静的再建術)も当院では多数行っています。

④挙筋腱膜の弛緩または瞼板からの離脱によるとされる腱膜性眼瞼下垂(美容外科用語)は、挙筋機能が良好であるという定義から一番の手術適応であるといえます。先天性眼瞼下垂でも再手術を繰り返し、重度の兎眼(目を閉じても薄目が開く)がなければ手術適応となります。

⑤あくまで私のOriginalな術式ですが….
腱膜性眼瞼下垂に対し→挙筋腱膜+Muller筋(0~5mm)短縮+瞼板上眼窩隔膜縫着
先天性眼瞼下垂に対し→Goatexシートを用いた吊り上げ術
を行っております。
Muller筋を短縮する理由はMuller筋の緊張が適度になければ挙筋の収縮能に結びつかないと考えるからです。

眼瞼下垂が両側にあれば、基本的には両側同時手術を行っています。
挙筋・皮膚縫合にはナイロン糸を用いますので、術後眼瞼腫脹(まぶたの腫れ・内出血)の多くは、長くても一ヶ月以内におさまることがほとんどです。

また皮膚の弛緩の強い方で、瞼の縁と眉毛の距離が広い方には、まず上眼瞼リフト(眉下皮膚切除術)を行うこともあります。

最近、眼瞼下垂の定義に該当しない症例に対し、ごく一部の形成外科医が交感神経刺激症状改善目的と称して、さかんに眼瞼下垂手術を行っているようです。(某国営放送の番組後、問い合わせが殺到しています)
そもそも眼瞼下垂手術は視機能(Q.O.V.=Quality of Vision)改善目的に行われる限りにおいてのみ保険適応となりますので、当院ではそのような適応外の症例に対して眼瞼下垂手術を行うことはしておりませんのでご注意ください。

– 手術前から手術後のフローチャート –

(手術日までに)

  • 詳しい問診と診察
  • MRD測定、挙筋機能の有無、Heringの法則(片眼を用手挙上すればもう片眼が下垂する)の有無、眼窩脂肪移動についての確認(下眼瞼の涙袋圧迫にて上眼瞼陥凹の改善があるかどうか)、上眼瞼内反症の有無
  • 起こりうる手術合併症の説明
    a.過矯正(上がりすぎ)→多くは経過観察、強いものには眼瞼マッサージ、再手術を行う
    b.低矯正(挙上不十分)→患者さんの同意が得られれば再手術を行う
    c.眉毛下垂→合併症というよりも下垂の改善に伴い必然的に生じる(先天性は例外)
    d.眼瞼後退(下を向いた時に通常よりも瞼が閉じにくい)
    e.兎眼性角膜炎→過矯正が長引くと生じる。点眼・眼軟膏の塗入を行う
    f.左右非対称→再手術を行うか否か?
    g.術後眼瞼血腫→程度の強いものは速やかに除去手術を行う
    h.部分的な釣り目
  • 皮膚切除を行うかどうか?(原則的には一期的には行わない)
  • 希望する重瞼幅の確認
  • 全身疾患の有無(心疾患・呼吸器疾患)、抗凝固剤・血小板凝集阻害剤(血液がサラサラになる薬と説明されていることが多い)内服の有無を確認
  • 術後間もなく大事なイベントを控えていないかどうか?(結婚式・披露宴の参列etc…)
  • 術前採血(HB抗原、HC抗体価、W氏反応)施行
  • 手術日決定

(手術前当日)

  • 朝入浴を済ませ、化粧はしない
  • 術2時間前よりリドカインテープの上眼瞼貼布
  • 術30分前までに来院
  • 術衣への着替え
  • 手術室へ入室

(手術後当日)

  • 片・両眼帯後手術室からの退出
  • 10~30分リカバリールームにて安静
  • 当日の飲酒、入浴、洗顔、洗髪は禁。瞼の腫れをできるだけ少なくするために、会話は最小限に、かつうつ伏せ姿勢をとらないように配慮する。

(手術翌日)

  • 基本的に受診は不要
  • 自宅にて患者自身で眼帯除去
  • 洗顔、洗髪は禁

(手術2日後以降)

洗顔・洗髪可

(術後7日目)

抜糸

なお、私(野間)が実際行っている眼瞼下垂手術について詳しくお知りになりたい方は
(医療関係者向きの教科書で恐縮ですが)

  • 眼科マイクロサージェリー第6版(エルセビアジャパン社)
  • 「眼科手術のロジック」(メディカルビュー社)
  • PAPERS No.51眼瞼の退行性疾患に対する眼形成外科手術」(全日本病院出版会)

などに私の原稿が記載されておりますので、御覧になってください。

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